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第4回肺高血圧症治療管理見学会に参加して

7月29日、第4回肺高血圧症治療管理見学会に参加した。

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国立病院機構岡山医療センターで、午前9時より、肺動脈形成術(BPA:balloon pulmonary angioplasty)の見学を行い、午後は同センター内にて、コメディカルを中心としたスタッフより肺高血圧症患者の治療・管理に関する講義の後、肺高血圧症の診断・治療に関する部署(心エコー、外来、病棟、リハビリテーション)の見学を行った。
同センターで、この肺高血圧症の診断・治療の中心にいるのが、かの有名な松原広己先生である。そして、このセンターでの肺高血圧症の管理はコメディカルも一体となり、システマチックに行われているといった印象であった。
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例えばフローランの導入時、BPAの周術期などはクリティカル・パスが作製されており、BPA術後は看護師がNIPPVの離脱に向けて、酸素化の改善を観ながら管理を行っていた。また細かい点にも配慮されており、フローランを静注する際のカテーテル留置に使用するテープのかぶれを防ぐために、パッチテストを行ったり、同治療の導入前には患者教育や精神的な面のサポートも行っていた。恐らく、このシステムが出来上がるまでには、かなりの年月を経ているものと思われる。松原先生の一人でも多くの肺高血圧患者を救いたい、長く生きてもらいたいという「情熱」がきっとここまでさせたのであろう。そして、その共通意思のもと、医師とコメディカルの間にはしっかりとした信頼関係が築かれているという感じであった。全国から肺高血圧症患者が高い旅費を払ってまでも足を運んでくることがうなずける。
同センターの見学を終えた後は、岡山全日空ホテルへ移動し、フローラン治療をうけている患者の実際の体験談を聞いた。患者さんは疾患の性質上、若い女性ばかりである。フローランによる副作用は多かれ少なかれあったが、すべての患者さんが治療を受けていることに納得し、前向きであることがすごく印象的であった。我々にも肺高血圧症の患者さんはいるが、なかなかフローラン導入というのは抵抗がある。在宅酸素を行うだけでも、若い女性には抵抗感があるのだが、持続静注で投与する同薬の治療はさらに強い抵抗感が生じることは容易に推測できる。また、顔面紅潮、下顎痛、下痢などの副作用もある。そこで「なぜそのような治療を受け入れられたのか?」と尋ねてみた。その中の答えに次のようなものがあった。松原先生に「何がしたいか?」を聞かれ、「○○をしたい。」と答えたそうだ。すると先生は「それができるように必ずしてやる。」と言ったそうだ。そうしてフローラン導入をされた。副作用がそんなにきついものとは思っていなかったとも言っていなかったが、その表情は明るく、先生に全幅の信頼を寄せている感じであった。治療が奏功した患者さんの体験談ではあるが、若い女性の人生を背負うようなこのような発言はなかなか出来るものではない。しかし、この会話が医師と患者間の信頼関係を強固なものにしているのかもしれない。また、別の中学生頃に発症した患者さんは、運動系のクラブには所属していたが、身体がきつくなり、校内のマラソン大会では年々、順位をさげ、最後はクラブ活動の際の練習でも走れなくなったそうである。その際、周囲からは怠慢をしていると思われ、精神的にきつかったとも話していた。肺高血圧症という疾患の認知度が低く、見た目には他の人と変わらないため、患者さんが身体と気持ちのギャップに苦しんでいることも改めて知らされた。
その後、「肺高血圧症治療のゴール」というタイトルの松原先生の講演を拝聴した。先生のフローランの投与量はかなり多い。肺動脈圧の正常化、さらにはリモデリングの改善を、そして10年後、20年後の生存率改善を目指して、血小板の低下以外の副作用には目をつむり、増量していくのだという。この治療方法が将来、どのような結果になるかはまだ誰も分からないが、少なくとも現在までの経過は良い様である。松原先生は信念をもって、エビデンスを築き上げて、肺高血圧症患者が一人でも、少しでも、長く生きられるように、さらにはよりQOLが上がるように情熱をもって取り組んでいるように思われる。
・・・今にも、「情熱大陸」の葉加瀬太郎のバイオリンの音が聞こえてきそうである。

朝9時から始まった見学・講義も20時過ぎに無事終了。懇親会へと突入した。
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岡山といえば、名物の“ままかり”という魚がある。懇親会会場の料理の中に焼き魚がおいてあった。ままかりの現物を知らない我々にとって、これがままかりかどうかはわからなかった。そこで、ホールスタッフに聞いてみた。すると、「確認します。」と一言。戻ってきて、一言、「めばるです。」同伴の仲間と顔を見合わせて、大笑い!
その後、2次会に街中の居酒屋に行って、“ままかりの酢漬け”を頼んでみた。確かに、さっきの魚とは大きさが全く違う。

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こんな大きさの魚だと確認!そして岡山の夜は更けていった。

7月30日、9時より岡山コンベンションセンターにて、「フローランの導入・増量について」(松原先生)、「トラブル対策について」(看護師)、「肺高血圧症患者における理学療法士の役割」(理学療法士)、「外来治療のコツ」(松原先生)、「症例検討」(小川先生)の講演があった。肺高血圧症患者の治療を中心に、今まで培った彼らの経験などを惜しげもなく話して頂いた。本当に感謝の一言である。罹患率が非常に少ない疾患、特にその治療法についての貴重な講演が聴け、見学ができた。さあ・・・我々も頑張ろう!
by nagasakijunkanki | 2011-08-04 14:08 | 学会・海外レポート


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